足立 愛子
建築家伊東豊雄氏
2023年11月13日(月)

先日NHKで「伊東豊雄最後の講義」という番組が放送されていたので録画してじっくり講義を受けました。

約3時間の講義だったものを編集して1時間ほどになっていましたが、聞きごたえは十分でした。

伊東氏の建築家としてのスタートから現在に至るまで、時代背景と建築の在り方、考え方を語られました。

建築家として転機となった建物を、設計意図やエピソードを交えて話してくださり、とても興味深いものでした。

 

伊東氏は大学卒業後、菊竹清訓設計事務所在勤中に大阪万博の建築に携わりますが、

来場者が太陽の塔ばかりに足を運ぶ為、近代建築に疑問をもちます。

その後、独立して住宅設計などを手掛けるも公共建築を手掛けるチャンスになかなか恵まれず、やっと手掛けることのできた博物館の設計。

そこで直面したのが来場者のための提案を管理者の都合で否定される現実でした。

「これが公共建築か」とショックを受け、何としてもそれを変えたいと思ったそうです。

その後は数々の公共建築や大建築を手がけますが、2011年東日本大震災が起こります。

伊東氏は、震災直後の仙台を訪れ建築ができることは何かを考えます。

「仮設住宅よりも避難所にいたい」という人々の声を聴き『みんなの家プロジェクト』を発足。

被災者の方々が集まりコミュニケーションの取れる集会場のような場所を提供しました。

誰のための建築なのか、そこに焦点をあてたプロジェクトでした。

かつて抱いた近代建築、公共建築への疑問や失望への挑戦であり、答えだったのではないかと思います。

2013年には建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞し世界の伊東となり、

現在に至るまで名建築を残しています。

伊東氏の名建築の一つ、岐阜市の図書館「みんなの森ぎふメディアコスモス」

そのタイトルに込められた建築家・伊東豊雄氏の信念を強く感じました。